“Meet & greet startup 4.0” Vngeeks 2018にて

夏も終わりに近づいたある暑い日。Vngeeks(*1)のイベントがフランジアによって盛大に催されました。そこに参加したのは、PM(プロジェクトマネージャ)やフリーランスから起業家に至るまで、多種多様な背景を持つベトナム人と日本人です。彼らに共通しているのは、今まさにホットなトピック”meet & greet startup 4.0″、すなわちIoTの力に魅せられた人々であるということでした。

私たちは、この機会にViblo(*2)のコンテンツを充実させようと、今回のイベントで最もホットなゲストであるTomochainのCEO、Long Vuong氏にインタビューしました。

Tomochainは仮想通貨ビジネスにおける最初のスタートアップで、2017年にシンガポールで設立され、近年では主にベトナムで成長を続けています。氏は、ブロックチェーンに関する知識を包み隠さず話し、私たちのブロックチェーンに対する疑問を解き明かしてくれました。

注釈:
1)ベトナムのITエンジニアコミュニティのこと
2)フランジアが開発している、エンジニア向けのナレッジ共有サイトのこと

ビットコインは、未来の価値貯蔵手段になるか

“Bitcoin(ビットコイン)”は、ビットコインネットワークが持つ送金用ユニットの名称です。2009年初頭、リーマンショック後の中央銀行による金融機関救済が続く中で、Satoshi Nakamotoによって考案されました。2015年にEthereum(イーサリアム)(*3)が出現するまでの間、ブロックチェーンの使命は、伝統的な財政システムをグローバルなレベルで再建し、コンセンサス、プライバシー、そしてアイデンティティという価値をもった非中央集権的なネットワークを形成することでした。

"Bitcoin, Litecoin, Dogecoin Transactions historical chart"

“Bitcoin, Litecoin, Dogecoin Transactions historical chart”

“Bitcoin, Litecoin, Dogecoin Transactions historical chart”を見ると、2017年末まではイーサリアムがかなり激しく値動きしている一方で、ビットコインの取引は比較的安定していることがわかります。これについては、ベネズエラで進行したハイパーインフレーションによって説明ができます。当時、ハイパーインフレーションが起きた結果、ベネズエラは世界で最も仮想通貨を取引している5ヶ国のうちに入ったのです。もう少し可愛げのある説明だと、CryptoKittiesのリリースがあります。これは、イーサリアムを使用した世界で最初のゲームであり、ビットコインによる支払いにも対応していました。

2017年の終わり頃におけるイーサリアムの不安定な値動きは、TPS(*4)に関するブロックチェーンのスケーラビリティ問題(*5)を明らかにしました。現在、一般的に使用されているクレジットカードのTPSが4000~30,000であるのに対し、イーサリアムのTPSは15、ビットコインのTPSは7しかありません。少ないコストで、より多数の取引に対応できる新しい仕組みが求められているのです。

3)スマートコントラクトや分散型アプリケーション開発のプラットフォーム。「Ether」と呼ばれる内部通貨を持つ。
4)Transaction Per Secondの略で、あるシステムが1秒間に処理できるトランザクション(取引)の件数を表したもの。
5)
取引件数の大幅な増加に対して、データ処理のスピードが追いつかなくなる問題のこと。

NEMの創立者からTomochainの創設者になるまで

2014年、マサチューセッツ工科大学の経済学博士課程の最終年度に、Long氏はブロックチェーンとの運命的な出会いを果たします。当時、彼はビットコインの全ソースコードをJava言語に変換するプロジェクトにPMとしてジョインしました。6人の匿名エンジニアが参加したこのプロジェクトは、今では最も広く知られているブロックチェーンのプラットフォームの1つであるNEM(ネム)を生み出しました。

博士課程を修了すると、Long氏は故郷へ戻り、Tomochainを立ち上げました。そして、Tomochainのエコシステムにおけるインフラのスケーラビリティ向上を目的として、ハノイにいる25人もの優秀なプログラマと共にR&D活動を行い、年に1度のブロックチェーン開発カンファレンスで研究論文を発表し続けました。現在、Tomochainはサプライチェーンビジネスで、devery.ioやwetrustといったトラディショナルなサービスをベトナムのみならず、世界中で展開しています。


Q & A

Q:ベトナムにおけるブロックチェーン市場と仮想通貨取引市場には、信頼性と発展性があると思いますか?

Vuong:現在のベトナムでは、法的な支払いにビットコインを使用することは認められていません。実は、ブロックチェーンに関する明確な規制やルールがないんです。ある情報によると、FPT大学が授業料の支払い方法としてビットコイン決済を許可したことが、ビットコイン決済を禁止する規制に繋がったようです。

今でもベトナムは、仮想通貨によるビジネスや金融についての枠組みを定めていません。我々は法的な体制やルールを作るために、この9月に会談を行う予定です。

 

Q:Tomochainを設立するにあたり、大変だったことはなんですか?また、今後における会社のプランについて教えてください。

Vuong:Tomochainは、ICOをきっかけとしてその名前を知られはじめました。ICOに必要だったホワイトペーパーの80%は私が書いたものです。残りの20%は、会社の核でもあるR&Dチームが手伝ってくれました。R&Dチームは、Go言語を使いこなす4人のインフラエンジニアと3人のアプリケーションエンジニアから構成されています。ICO当初からのサポーターや投資家たちは、今でもTomochainを応援してくれています。設立当初の困難は、インフラ開発者を採用することでした。私たちは、多くの人を採用するのではなく、高いスキルを持った少数精鋭を目指していたのです。アプリケーション開発については、必要なエンジニアの人数はインフラ開発よりも多いものの、アプリ開発用のイーサリアムプロトコルを扱えるエンジニアを集めるのはそこまで難しくはありませんでした。

将来的に、Tomochainを国際的なブランドに成長させようとすれば、インフラの安定と、アクティブユーザーの可用性向上に繋がるアプリケーションが豊富に必要になるでしょう。

 

Q:Tomochainがソースコードをアップデートしても、ユーザーが古いバージョンを使い続けていることに問題はありますか?

Vuong:現在、Tomochainのソースコードはオープンソースになっていて、GitHub上で公開されています。このソースコードはすでに色々なところでフォークしていて、ネットワークにいるメンバーの51%以上が承認した場合にのみ、公式のバージョンを使用することができます。現在、世界中にあるブロックチェーンのソースコードはこのような形で運用されています。ですから、開発の初期段階でブロックチェーンのファウンダーがいなくなったとしても、他の誰かによってその力は拡散していくのです。

 

Q:ブロックチェーンは、どういったビジネス領域において利益をもたらすと考えていますか?

Vuong:貯蔵された価値をいつどこへでも運べる形で持っていたい人々に適しているでしょう。たとえば銀行や投資家といった人々です。グローバルな観点からブロックチェーンを見た時、マクロ経済学的な歴史は、ある事実を教えてくれます。それは、アメリカやイスラエル、中国といった、政治的あるいは経済的に不安定な国は、ビットコインの保有量と暗号通貨による取引量が特に多いという事実です。

現在のブロックチェーン市場はとても小さく、3000万個のウォレットと、1万人のアクティブユーザーがいるのみです。しかし将来、ブロックチェーンと既存のビジネスが繋がれば、アクティブユーザーの数は引き上がります。また、データ交換アプリケーションは、我々がユーザーの動向を把握するのに一役買ってくれるでしょう。

 

Q:現在、様々な仮想通貨がホワイトペーパーやユースケースとともに絶え間なく登場しています。未来におけるブロックチェーン開発の動向はどのようになると予想されますか?

Vuong:ネムもまた、ビットコインを使ったシステムです。これは、日本の仮想通貨であると噂されていました。多種多様な仮想通貨の登場は、ブロックチェーン開発に対する熱量の現れであり、また競争の合図でもありました。これは、2013年初頭のソーシャルネットワークブームに似ていて、今でいうFacebookのような強者が現れるまでは、中心となる強いプレイヤーが入れ替わり立ち代わりするような環境になるでしょう。

Netscapeブラウザを生み出したMarc Andreessenは、今ではブロックチェーン投資家であり、現代を”ソフトウェアが世界を食う”時代であると言いました。つまり、このデジタル時代を生き残っていくには、既存のビジネスプロセスをインターネットに繋げることが必要なのです。ブロックチェーンについても同様で、データはもはや大企業の資産では無くなっています。日本はある意味、その動きに乗り遅れました。しかし、未来のための資金調達を考えると、日本が再びトップに立つための重要なキーはやはりブロックチェーンなのです。私の予想では、2050年代には世界中のビジネスにおける計算や取引、その他のプロセスの20~30%はブロックチェーン上で行われ、現代の中央集権的なマネジメントは姿を消し去っているでしょう。