グローバル化していく世の中におけるエンジニアの生きる道

Developers Summit 2018:セッション参加レポート

去る2/15と2/16の二日間にかけて、エンジニアの祭典Developers Summit 2018(以下デブサミ)が開催されました。今年のテーマは「変わるもの×変わらないもの」ということで、フランジアからも2名のエンジニア(西、楢崎)が株式会社コウェルのお二方とのグローバル開発の事例、ベトナムと日本のエンジニアの強みや課題について語るトークセッションに参加しました。

今井:
本日はたくさんのセッションの中からこちらを選んでいただき、ありがとうございます。開発エンジニアの本音トークを聞き、エンジニアの生きる道を考えていただくきっかけにしていただきたいと思います。現在のエンジニア有効求人倍率は9~8倍程度を推移しております。経済産業省の資料によると、2020年までにはIT人材が30万人以上不足すると考えられています。その解決策として、現在日本のIT業界の半数以上はコスト削減ではなく人材確保を目的としてオフショア開発を行っています。

本日はエンジニアのキャリアとして「グローバル開発ってどうなの?」というテーマから始めていきます。では会社紹介や自己紹介などを含めて、ここから登壇者の方々にお話を進めてもらいましょう。

田村:
株式会社コウェルの田村と申します。本日はご来場いただきましてありがとうございます。当社はグローバルアウトソーシングを展開する会社です。東京天王洲アイルに本社を構え、ベトナムのハノイのダナン、2箇所に子会社を設けています。海外で働きたいという方もいらっしゃると思うので、その方たちの背中を押すつもりで本日はお話ししていきたいと考えています。よろしくお願いします。

臼田:
同じく株式会社コウェルの臼田と申します。オフショア歴は約8年です。現在はプロジェクトマネージャーからプログラミングまで、幅広くエンジニアをしています。本日はよろしくお願いします。

西:
フランジアは2012年に創業しました。国内外合わせて10都市に拠点を持ち、社員数は1000名ほどです。事業内容はオフショアのプロダクト開発、アクセラレートプログラム、人材育成を行っています。スタートアップ支援をしたり、アジャイル開発を取り入れたり、Ruby on Railsが強かったりするところが特徴です。オフショアと言ってはいますが、どちらかというとスタートアップのためにどういうことができるかというプラットフォームになっていきたいと考えています。私は株式会社フランジアの西と申します。キャリアは組み込みのエンジニアから始まり、ソーシャルゲームなどを手掛けた後にマーケティングツールの開発を行って、今はPMO業務に携わっています。

楢崎:
株式会社フランジアの楢崎と申します。前職では富士通グループのSierとして、国内でさまざまな業種のプロジェクトに携わっていました。そして2年ほど前、ベトナム中心で活動しているグローバル開発会社である当社に入社しました。本日はグローバル開発についてお伝えしたいと思っています。よろしくお願いします。

今井:
本日のセッションは「なぜ今の会社を選んだのか」「就業後に感じたギャップと、そのビフォーアフター」「それを乗り越えてエンジニアとして成長できたこと」「この仕事にはどんな人が向いているのか?」「日本人の強みと今後の抱負」、以上の五つのテーマについてお話しを伺いたいと思います。では最初に「なぜ今の会社を選んだのか」というテーマからスタートします。オフショア、ベトナム、請負などエンジニアとしてのさまざまな生き方がある中で、なぜ今の会社を選んだのか。株式会社コウェルの田村さんからお願いします。

田村:
20代の間は開発エンジニアとして国内でさまざまなプロジェクトに参加し、プログラミングスキルを磨いてきました。さらに事業管理や、営業についても学ぶうちにプログラミングだけではなく手広くいろいろなことをやっていきたいと考えるようになっていきました。さまざまな経験を積んでいくと「自分が作りたいと思ったものを作りたい」という気持ちが芽生えてきました。通常業務をこなしながらもできることではありましたが、やはり専念したいという気持ちがとても強かったので、30歳ごろにフリーランスになる決断をしました。フリーランスとして働きながら自分の実力を試すと同時に、自分の作りたいものを作っていきました。ただフリーランスは自分一人で物を作り、生計も立てなければなりません。そこで自分の力はとても微力だということを痛感しました。そのときに知り合った人たちと一緒にオフショアをすることになり、最初はクライアントの立場でオフショアやグローバルの開発を手がけていきました。しかし若くて活気に満ち、勤勉なエンジニアたちと一緒に開発したほうが自分の作りたいものを作れるのではないかと思い、株式会社コウェルへの入社を決意しました。

臼田:
私は最初、クライアントとしてオフショア会社に関わっていました。当時在籍していた会社のつながりで株式会社コウェルに入社し、約4年ほどが経ちます。コンビニの店員などを見ていただくとよく分かりますが、近年では本当に日本で働く海外の人が増えてきました。IT業界でも日本から中国、中国からベトナムへとオフショア開発の場がシフトしてきています。昔はコスト削減をするのが目的でしたが、現在では人材の確保をするためというふうに視点が変化しています。今後の日本はアジア圏だけではなく、たくさんの諸外国に頼っていくことになるのではないでしょうか。そんな環境の変化の中、このビジネスは絶対に必要になると思い、グローバルエンジニアとしての経験を積むために株式会社コウェルに入社しました。

西:
株式会社フランジアに入社する前には、2社にわたり、7年ほど事業会社に勤めていました。ちょうど転職を考え始めたとき、日本のIT事情が変わり始めました。民泊などを始めとするように、既得権益とうまく付き合っていくことが重要だと考えられるようになってきたのです。もしかしたら、少人数で爆発的にサービスを成功させる時代ではなくなってきているのかもしれないと思いました。それまではずっと事業会社で働こうと思っていたのですが、そこにこだわる必要性が薄れてきたと感じました。そして優秀な人たちと一緒に働けて、教育や人材育成に注力している企業はないかと探していたとき、株式会社フランジアを見つけたんです。オフショア開発の会社に入りたいと思ったよりは、自分の求めている条件に合致する企業が株式会社フランジアだったということになりますね。

今井:
フリーランス、クライアント、事業会社、辿ってきた道は三者三様ですね。二つ目の「就業後に感じたギャップとビフォーアフター」のテーマに移りつつ、楢崎さん、西さんのお話しを伺いたいと思います。

楢崎:
10年前にオフショア開発を手がけた経験があったので、グローバル開発には身構えている部分もありました。しかし実際に行ってみると案外うまくいったんですね。ベトナムでの話ではありますが、親日であったり、日本のサービスについて非常に熱心に勉強して歩み寄ってくれていたりするんです。私のほうも国内で培った問題解決能力を駆使することでうまくプロジェクトを回すことができたので、ギャップはなくスムーズに進んだところが衝撃的でした。また一つのバケツにウォッカを注いでみんなで飲むといった「バケツウォッカ」という風習では、一体感を得ることができます。そして日本のIT業界には声出しの文化はありませんが、ベトナムの人は「わっしょい」という日本語を使って盛り上げてくれます。海外の人が日本語でテンションをあげようとしてくれているのはとてもうれしいですね。

ベトナムは発展途上国で、IT技術も未熟だと思われがちです。ところが実際にやってみますと、そうではないのです。プロジェクトが多いとJenkinsが重くなってしまうので、サーバーのスペックを上げたり、Jenkinsのチューニングが必要になってきたりします。そのとき彼らはCIツールを自分たちで作ってしまうんです。クラウド上にdocerを立ててプロジェクトごとに検討できるようにしたり、コードレビューやテスト実行、デプロイも自動化してしまいます。CIやCDは自作するんです。ベトナムでもしっかりとした技術力を持ち、熱意を持ったエンジニアが育っているということに驚きました。

西:
日本人は「自分たちはすごい」という思い込みがあるので、他国の人を見下しがちなところがあります。実際にGDPの数字は優れていますが、それ以外で日本人がすごいという根拠は薄いんですね。私も数年前は、日本人は優れていると思い込んでいました。実際にベトナムに行って優秀なエンジニアたちと一緒に仕事をすると、日本人の優れている部分が明確に分かります。それと同時に、ベトナム人の優れているところも浮き彫りになるんです。ただ、ベトナム人が日本人に勝てない原因はかなり根深いところにあると考えています。一つは教育の質が悪く、特に地方に行くほど差が激しいということです。また、一般的にベトナム人は短期的に物事を考えがちです。長期的な考えを身に着けるのは少し困難かもしれません。ここは日本の企業が教育をし、補うべきポイントだと思います。オフショア開発については、日本人がやりたくない仕事を任せているところがあるので、仕事に意味を見出したり経験を積んだりできる環境が整っていないと感じています。これは日本が優位に立てている原因でもありますが、ビジネスの構造も含めて根本的な見直しが必要なのではないでしょうか。

今井:
なるほど。ありがとうございます。三つ目の「その環境で皆さんがエンジニアとして成長できたこと」というテーマに移ります。楢崎さん、お願いします。

楢崎:
日本では、日本語で書かれた技術本を手に入れることは簡単です。しかし海外では母国語の技術本が少ないので、英語の技術本を読み解き、自分たちで技術を探求していく必要があります。ですから海外のメンバーと一緒に仕事をすると、新しい技術に触れる機会がとても多いのです。彼らも勉強した知識をプロジェクトに生かしたいと思っていますから、そういった向上心はこちらにも影響を及ぼしますね。それから私はもともとあまり海外出張がありませんでした。しかし今は年に10回以上海外に行っていますから、日本以外の場所でも生活できるという自信がつきました。また海外のメンバーとのやり取りの中で、情報を分かりやすく伝達する能力が磨かれていったと思います。そういった点で成長を感じていますね。

西:
楢崎さんもおっしゃったように、離れた場所で仕事をするとどうしてもコミュニケーションの齟齬が起こりやすいですから、それを乗り越えてアウトプットする方法を考えなくてはなりません。そのためには自主的にやることを柔軟に変えながら、押さえるべきことを定義し、やり遂げていくことが必要です。つまり最大限の結果を出すために優先順位をその場その場で変えつつ、どこに力を注いでいくか。その判断を素早く付けられるようになったのが、成長できたところだと思います。またクライアントからしてもわれわれからしても「請負だから言われたことしかやりません」という態度には全くメリットがありません。クライアントの設定漏れや指示し忘れたところなどはこちらで判断し、対応しています。資金計画を鑑みて機能の変更なども行いますから、投資家的な面もあるのかもしれません。

田村:
西さんからもコミュニケーションの話が出ましたが、実は私も英語がほとんどできませんでした。ですからグローバルで働く前は英語に対する不安感がありました。今は海外で年の半分を過ごしていますが、仕事でも私生活でも会話は必要不可欠です。そのため自然と英語のスキルが磨かれ、コミュニケーションの壁を克服できたと感じています。IT業界に居ると英語の文章、参考情報、データ、URLなど英語に接する機会が多いですが、英語を読むことに対する苦手意識も克服できましたので、情報のインプット量が多くなっていると思います。また英語ができなかったとしても、エンジニア同士の共通言語としてプログラム言語があります。それがコミュニケーションの一つであるということに気づけたのはとても大きかったです。そういう中でエンジニアと会話をしながら教えたり、教えられたりしています。思った以上に教育が楽しいので、自分は教えることに向いているのではないかという発見もありました。

臼田:
楢崎さんがおっしゃったように、海外で生活できる感覚がつかめたというのは同感です。海外に行っても日本国内と変わらずに過ごせるようなタフさが身に着いたと思います。今では国内出張に行く感覚でベトナムに赴いています。また基本的に海外とやり取りすることが多いので、リモート作業も難なくこなせるようになりました。

今井:
このセッションではオフショアでベトナムとやり取りのある方が比率的に多いみたいですね。いろいろとお話を伺ってきましたが、長年オフショアに携わっている先達として、どんな人がこの仕事に向いているのかを聞きたいと思います。株式会社コウェルの田村さん、お願いします。

田村:
いろいろな国の方々と開発プロジェクトを進めていくと、やはり日本人は真面目な働き者だということを感じます。ですから日本人には、プロジェクトのまとめ役や進行役が期待されていますね。チームで開発することが好きな人が向いていると思います。一人で専門的な開発を行うよりも、チーム全体で一つのプロジェクトを成功させたいという思いの強い人ですね。あと、先ほどお話ししましたように、プロジェクト管理スキルを身に着けたり磨いたりしたい方も向いていると思います。いろいろな国の文化がある中でも、コミュニケーションは取らなくてはなりません。日本のやり方が通用しない中で、どれだけ自分の管理スキルを高めていけるかどうか。それを試してみたい方は向いていますね。それから公私問わず、いろいろな面でチャレンジしたいという方はぜひ海外をおすすめします。

今井:
ベトナムではチームメンバーやクライアントなど、年齢や会社の垣根を超えてみんなで飲みに行くことが多いです。海外生活を楽しみつつ、全員でワイワイするような夜も楽しめる、そういった人が向いているのかもしれませんね。次は臼田さん、お願いします。

臼田:
やはりコミュニケーション能力のある人でしょうか。グローバル開発なので、海外の方と接する機会が多いです。海外の方とは言葉の壁のほかに、文化の壁もあります。それは人と人との価値観と同じように、決して交わることがありません。しかしお互いに歩み寄ることはできるんですね。コミュニケーション能力があれば、歩み寄りは楽になると思います。

楢崎:
「自分は発注者だから」「自分は受注者だから」という考えを持たず、全員一丸となって、チームで一つのプロダクトを成功させるために努力できるということが非常に重要だと思います。またベトナムでは若いエンジニアで頑張っている人が非常に多いです。そういう人たちと一緒に飲みに行くと、若い力をもらえるのでこちらまで元気になれるかもしれません。

西:
私は日本ではあまり飲み会が好きではありませんでした。でもベトナムの飲み会では、自分よりも若い子が必死に技術を習得しようとして、一生懸命話しかけてきてくれます。その姿勢には自然と感動してしまいますね。新鮮な気持ちになれるので、お酒の場は楽しいと思います。ベトナムでの飲み会に対する不満を漏らす人は今までに居ないので、やはり皆さん同じ気持ちを抱いて帰国しているのではないでしょうか。

今井:
最後のテーマは「日本人としての強みと今後の抱負」です。今日登壇している2社はどちらもベトナムの北のほうにあるハノイという首都を拠点にしています。しかし株式会社フランジアのほうは小企業を対象としていて、開発言語はRubyが得意。株式会社コウェルは大企業のクライアントが多く、PHPやJavaが開発の基本になっているという違いがあります。ここでは株式会社フランジア、株式会社コウェル、お一人ずつにお話を伺いたいと思います。では株式会社コウェルの田村さんからお願いします。

田村:
先ほどもお話ししたように、日本人の経験は海外でかなり重宝されると思います。私自身もそうですが、日本のIT業界の方は長時間労働が基本となっています。プライベートを犠牲にしている方も多いでしょう。そんな環境で諸先輩方からいろいろと学び、知らず知らずのうちにたくさんのスキルを身に着けているはずです。日本人としての考え方、品質、将来を作るというプロダクト開発の経験をもとに、そのスキルを海外で生かすことを考え、今後世界に羽ばたいていけたらいいなと思っています。

西:
オフショア開発という単語が何度か出てきましたが、皆さんが今まで抱いていたオフショアのイメージとずれていた部分もあったのではないでしょうか。自分が日本で働くのか、それとも海外に出ていくのか、はたまた日本に居ながらグローバルに海外と関わっていくのか、やり方はさまざまです。働き方についても、レベルの高いエンジニアたちの中で自分も技術者として切磋琢磨してやっていくのか、プロフェッショナルの管理者としてさらにスキルを伸ばしていくのか、事業者としてプロジェクトをコントロールする側に立つのか、これもいろいろとあります。ただのオフショア開発、管理者、マネージャーというだけではなく、どういう関わり方をしていきたいのかも考えてみてください。今後キャリア変更を考える方の参考になれば幸いです。

今井:
あっという間にお時間が経ってしまいましたが、本日のセッションはいかがでしか? デブサミの今年のテーマ「変わるもの×変わらないもの」のもと、グローバルのオフショア開発についてお話ししてまいりました。グローバル開発についての印象もだいぶ変わったのではないかと思います。ベトナムは真夏に40度以上になるような非常に暑い国ですが、その分国民にも熱気があり、開発にも熱が入る環境ということをお伝えできましたら幸いです。


いかがでしたでしょうか。セッションには様々なトピックがありましたが、セッションのタイトルには「エンジニアの生きる道」というワードが含まれていましたが、オフショア開発のイメージが変わるような内容だったという感想が多く、「世の中に広まっている悪いオフショアのイメージを払拭したい」ということはフランジアが伝えたいテーマの一つなので関係者一同手応えを感じておりました。

記事を読んで「オフショア開発にチャレンジしてみようかと思うけど、いろいろと心配」とお考えなら、ぜひ一度、フランジアにご相談ください。これまで開発を担当したことがないという方でも「やってよかった、楽しかった!」と感じていただける濃密な機会をご一緒できればと思います!